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検察側の罪人

都内で発生した殺人事件。
犯人は不明。
事件を担当する検察官は、東京地検検事部のエリート検事・最上と、検事部に配属されてきた駆け出しの検事・沖野。
最上は複数いる被疑者の中から、一人の男に狙いを定め、執拗に追い詰めていく。
その男・松倉は、過去に事項を迎えてしまった未解決殺人事件の重要参考人であった人物だ。
最上を師と仰ぐ沖野は、被疑者に自白させるべく取り調べに力を入れるのだが、松倉は犯行を否認し続け、一向に手応えが得られない。
やがて沖野は、最上の捜査方針に疑問を持ち始める。
「最上さんは、松倉を、犯人に仕立て上げようとしているのではないか?」...。
互いの正義を賭けて対立する二人の検事。
彼らの戦いに、待ち受けていた決着とは――。

Hulu「検察側の罪人」より

無駄になりがちだったサブスクの月額を取り戻そうキャンペーンということで
Huluの特集「正義について考える」を漁りつつ、タイトルだけで見た作品。
前提となる知識は皆無で、サイトにあるあらすじだけが全ての状態で視聴しました。

主演は木村拓哉二宮和也
SMAPと嵐ですね。
この2グループはジャニーズの中にあって、男性でもそこそこ目を引くというか。
まぁSMAPに対して嵐は女性向けの色がやや強かったわけですが
それでもバラエティ番組は強しで、男性なりに多少なりとも意識するグループではあったのかな。
ある程度男にも認知されてるジャニーズは今のとこ嵐が最後なのかなぁという気もします。
その後の新しいグループもテレビには出てきますが、やはり女性向けの色合いが強いというか
男から見て面白いって感じにはならない。
ジャニーズの元々の立ち位置を考えればそれでいいのかもしれないけれどね。

 

それはそうと映画本編ですが、ページ開いた瞬間にジャニーズやんけ!ってなるキャスティングですが
とはいえ役者業メインのベテランですし、本格的な作品にもたびたび出演しているメンツですので
出自に対する偏見は捨てて、タイトルやあらすじへの興味を優先して視聴みようかなと。

冒頭ではキムタク教官のお言葉から始まります。
法律という抜群に切れる真剣を持つ職業であり、自分のストーリーに固執すると犯罪者に堕ちる。
そのまま本作のタイトルにも繋がる内容を冒頭にぶっこんできているので
これはわかりやすく本作のテーマであり
これから展開されるストーリーもこれに沿った内容である事が印象付けられます。

現にその後の展開としては、とある殺人事件絡みで
どうみても悪人にしか見えない人物に対し
恫喝に近い聴取を行ったり、あれやこれやとちょっと危なっかしい話が続く。
途中で過去に起きた別の殺人事件の回想なども挟まり、関係を臭わせながら
果たして誰が犯人なのかという話が進んで行きます。
ただ、思ったほどサスペンスな感じはありません。
殺人事件そのものよりも、W主人公の検事二人の方に重点を置いて進行しているように見えます。

テーマを考えるなら検事側にフォーカスされているのも不自然ではなく、むしろ当然で、そこには何も問題ないはずです。
「過去の殺人事件」が作中の現代の殺人事件に対する検事側の判断に影響するだろうことは見ていてわかります。
ただどうしても見ていて気持ちが入らないというか、違和感があるんですね。

これは主にキムタク側なんですが、過去の殺人事件関連の人物であったり
あるいは今後の行動を左右する人物であったり
物語の軸に関係する人物達との独自の交流が描かれています。
しかし、本筋とは不釣り合いな単語がちらほらと飛び出してくるんですね。
それは日本のありかたであったり、戦争であったりといった内容で
とても大事なテーマだと思うんですが、ありふれた殺人事件の犯人を突き止めるという本筋に対して
随分と大それた内容というか、不釣り合い。
全く関係のない話が二つ同時進行しているような、フワフワした印象です。
この後リンクするかもしれないから切り捨てられないし、だけど全然接点ないなぁって。
個人的には、一度に広い範囲を見ようとするので焦点がボヤけてしまい
話がわかりにくくなってしまう印象がありました。

特にとある人物の葬式シーンがとても異様で、複数の女性が大声で泣き声をあげている。
知識として韓国系の葬式であるという事はわかったんですが
日本人が日本で葬式をあげているのに、こういう演出をしているのはなぜだろうと。
韓国系の人みたいな話はたぶん無かったし、少なくとも日本でこういう形式は珍しいので
登場人物が戸惑うくらいが自然だと思うんですが、それもなく普通に受け入れている。
そしてとても目立つ演出なのに、シナリオには全く絡まないんです。

伏線なのか無関係なのかもわからない大量の情報が飛び込んできて
本来の本筋である殺人事件に集中できていないのは見ていて感じました。
結果的に、横道のそれず殺人事件に専念をしていた二宮サイドの話がとても弱くなってしまった感じがあります。

それでも起承転結の転ともなると、いよいよ盛り上がってきたかとなるわけですが
そこから話が急加速をして再度自分を置いていきます。
説明もなく突然場面がかわり、そしてそこに至るまでの重要な話はセリフでさらっと語られるだけ。
そして終盤に展開が急加速したということは、時間切れが近いということで・・・

簡単に言うと、あらすじの「互いの正義を賭けて対立する二人の検事。」という部分が
丸ごとダイジェストにされてしまったというか
むしろダイジェストでも描き切れなかった本来の後半部分が全カット。
「来週へ続く」みたいなところで映画がピシャッと終わってしまいます。
あらすじがラストシーンの全てを語り切っている状態で、本当にそれ以降が存在しない。

全体的に構成に難ありというか。
もしかしたら戦争の話も含めて本筋と関係があったのかもしれませんが
前提知識もない初見の人間が、いきなり処理できる情報ではありませんでした。

検察側の罪人」の行動に関しても、冒頭にあったような法律という真剣を振り回す描写は特になく
ただ普通に犯罪者に堕ちるだけ。
そして罪人が罪を犯したところで展開が駆け足になり、そのまま途中で終わるので
冒頭シーンで印象付けられたテーマに関しては、尻切れトンボの印象が非常に強くなっています。

作り手側に何か伝えたいメッセージがあるということは、とてもよく理解できるんですが
いくら強くメッセージを発しても、相手に伝わらなければ意味がありません。
伝えたい事を全て大声で伝えようとした結果、何一つ伝わらなかったというのでは勿体ない。
せめて戦争関連は隠しテーマにするとか、もう少し目立たなくしてくれれば
見ている方も、そしてシナリオも本筋に専念しやすくなったんだろうなと思います。
少なくとも本作のタイトルや設定的に、国家や戦争がメインテーマになる事はないですからね・・・