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万引き家族

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。
彼らの目当ては、この家の持ち主である祖母の初枝の年金だ。
それで足りないものは、万引きでまかなっていた。
社会という海の、底を這うように暮らす家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、口は悪いが仲よく暮らしていた。
そんな冬のある日、治と祥太は、近隣の団地の廊下で震えていた幼いゆりを見かねて家に連れ帰る。
体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。
だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。

Amazon Prime Video「万引き家族」より

今までのブログ的にも、オタクが何気取ってんねんって作品だけど
普通の映画もたまには見るので、見た作品の感想を書く。

公開当初CMなどで見ていた時は、「万引き家族」という目を引くタイトルから
家族で万引きで生計を立てているイメージを持っていたんだけど
実際にはそんなライトな話ではありませんでした。
作品自体は万引きシーンから始まるんだけど、作中で両親は普通に働いていて
さらに祖母の年金もある。
働いて、年金というセーフティネットも受けていて作中特に贅沢をしているわけでもないのに
万引きで補填しないと生活が維持できない。
もちろん当人達の素性があまりよろしくないのは見ていてわかるし、価値観も少し汚いんだけど
ワーキングプアとか国民年金とか、そういった社会問題に乗っかった作品なのかなという印象。

邦画で社会派、さらに受賞作となると
ただ暗いだけで盛り上がらない陰鬱な作品のイメージが強いんだけど
これはキャラの性格もあり、意外と飽きずに見れる作りになっていました。

 

全体的には犯罪に関わるようなシーンや下衆な会話なども多く
話の筋だけを追いかけると娯楽性も何もない、ただただ社会の暗部を見ていくような内容になってしまいます。
普通に見ればまさに「悪人」ばかりの作品なんですが
そのうえで描かれる生活描写というのは
家族特有の距離感がしっかり描かれていて、普段のそっけない態度や団欒など
意外とリアルに家族を描いてるなという感じ。
家のゴチャゴチャしている感じとか、生活感がたまりません。

また、不良が子犬を助けるではありませんが
貧しさから金には汚いけど、根は良い人達という印象も与えています。
特に虐待を受けていた少女を保護したあと
体の傷から垣間見える本当の両親との対比で、こちらの方が本物の家族なんじゃないかと。
少女に対する樹木希林のおばあちゃん感が物凄くて、本当に自分の婆ちゃんを思い出す勢いで胸がきゅーっとなる。
他の家族同士の関係も多少のぎこちなさはあるものの、精一杯相手に優しく振舞っている。 もちろん悪いことはしているんですが、なんだかんだ幸せな暮らしが描写されていき
後半に入る頃には家族としては理想形に近い風景が印象付けられていきます。

多少の綻びや不穏な空気を抱えながらも、問題なく生活していく彼らですが
終盤に入ると一気に崩壊へ突き進んでしまいます。
崩壊のきっかけは倫理感によるもので、「万引き家族」はその報いを受ける事になります。

ここから先はそれぞれの家族に対し、色々な質問が投げかけられます。
世間一般的には救いようのない悪党の集団なので
そのレッテルの枠組みに収めるような質問や誘導で追い込まれていくことになります。
それ自体は悪事を働いたのは事実なので、ある程度仕方のないことですが
「家族」としての彼らを否定したり、幸せはこうあるべきといった発言には
それまで垣間見てきた彼らの生活とのズレや、横暴さ、暴力を感じるのも事実であり
視聴者としてもそれは違うだろうと反論したい部分はあるんですが
きちんと反論できる明確な答えまでは浮かんできません。
家族の定義はなんなんだろうと。

特に大人に振り回される形になった子供達のその後に関しては悩むところで
万引き家族はとても幸せだったけど、あのまま大人になっていれば
いずれは破滅しかなかったと思います。
でもその後の彼らの行き先を思うと、それが良いとも断言しにくい。
ただ、ラストから、しっかりと自分の意見を言える(意見を持てる)子供には成長できている気がします。
最後の表情を笑顔が消えたと見るか、成長したとみるか。

全体の感想としては、セリフとかではっきりと伏線を明示する内容ではなく
細かな会話、仕草、状況から伏線を察していかないと
本来の意味を見失うタイプの作品かなと思います。
スマホ弄りながら見てたら伏線全部見逃しかねないというか。
全裸になって正座しながら視聴する必要があって、結構エネルギー使うなぁと。
加えて神の目線で全体を見れる視聴者ですらそうなのに、登場人物はもっと限定的な範囲でしか物が見れていないので
おばあちゃんの封筒を見つけた時の反応とか、後から封筒の意味に気付いた時に待て待て待てとなる部分があったり
おそらくもっとしっかり見ればもう少し情報量がありそうですね。
自分じゃ100回見ても気付かないかもしれませんが・・・